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将棋の楽しみ方のひとつに「詰将棋」があります。王手の連続で攻めていき、一直線に玉を詰ますのが目的の、言わばパズルゲームです。
図は一番簡単な詰将棋です。玉の正面に持ち駒の金を打てば詰みですね。このように1手で詰めば1手詰と呼ばれます。以下は3手、5手、7手と奇数で増えていきます。もちろん手数が長くなればなるほど、難解になっていきます。
詰将棋は相手玉を詰ますテクニックを養うのに、もっとも最適とされています。プロ棋士は毎日のように詰将棋を解いてトレーニングをしています。アマチュアの大会でも、対局前にウォーミングアップとして詰将棋を解いている人がよく見られます。
対局相手が必要なく、ひとりだけで楽しめるのも特徴です。ちょっとした暇つぶしにもってこいでしょう。
指し将棋と同様に、詰将棋にもいくつかのルールがあります。
二歩はいけませんし、最後に歩を打って詰ます「打ち歩詰め」も禁止です。実戦ではあまりない打ち歩詰めですが、詰将棋ではしばしば見られます。
玉を詰まそうとする側、攻方(せめかた)は王手以外の手を指してはいけません。そして最短手順で詰むようにしなければなりません。3手詰だけど5手かかったという場合は、どこかで最善の手を逃していたということになります。
詰将棋は必ず玉が詰むようになっていますが、詰まされる側、玉方(ぎょくがた)はもっとも手順が長くなるように攻方の王手をかわさなければなりません。
詰将棋は持ち駒が設定されている問題が多いですが、これらはひとつ残らず使わなければなりません。途中で玉方の駒を取った場合は、それも使わなければなりません。
玉方は盤上の駒と攻方の持ち駒を除く、すべての駒を使用できます。
詰将棋は趣向を凝らした作品が多く、平凡に王手するのでは詰まないようになっているものが多いです。図は昔から初心者を悩ませてきたことで有名な詰将棋です。
角で6一にある銀を取る「6一角成」とすれば、いかにもすぐ詰みそうに見えます。しかし実際はどうやっても詰まないのです。つまりこの手順は不正解です。
正解は「5二角成」です。角をタダで捨ててしまう、思いつきにくい手です。しかし玉方はこの馬をどちらの銀で取っても、その横に持ち駒の銀を打たれて詰んでしまうのです。
このように詰将棋は、角や飛車といった強力な駒でも惜しげもなく捨てるのが大事なのです。そうした思い切った手が、実際の対局でも役立つことが少なくありません。
詰将棋にはパズルゲームの側面と、もうひとつ芸術作品という側面があります。趣向を凝らした作品が多いと書きましたが、将棋好きの人々は江戸時代の昔からその趣向を競い合って、数々の芸術的とも呼べる詰将棋を作り上げてきました。時の名人などが詰将棋の作品集を幕府に献上していたほどです。
特に『将棋無双』『将棋図巧』と呼ばれている2作は、現代においても詰将棋作品集の最高峰とされており、「これを解けばプロになれる」とまで言われています。
図は将棋図巧の最後を飾る『寿』と題された作品です。見ているだけで目が眩みそうですが、なんと611手詰。まさに芸術作品と呼ぶにふさわしい、作り手の多大なる情熱とセンスが込められた作品です。
現在もプロ棋士や詰将棋作家と呼ばれる人たち、そしてアマチュアの人たちが日々詰将棋作成に取り組んでいます。
単なるパズルというだけでなく、江戸時代から続く芸術であり、それに真剣に取り組む人がいる。このことを知っていれば、詰将棋を解くのがより楽しくなるかもしれません。
将棋本の中でも、詰将棋の問題集は常に人気です。特に近年は1手詰や3手詰といった初心者向けが多く刊行されており、書店に行けばほぼ確実に見つかるでしょう。
インターネット上にも、詰将棋を無料で掲載しているサイトやアプリが少なくありません。「詰将棋 無料」などで検索してみてください。他には主要全国紙やスポーツ新聞などに、プロ棋士による詰将棋出題コーナーが見られますが、これらは中~上級者向けとなっています。
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