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古代インドに、チャトランガというボードゲームがありました。あるお坊さんが戦争好きの王様を止めようと、戦争を模したゲームを作り献上した……そんな言い伝えがあります。
このチャトランガが西洋に伝わりチェスに、日本に伝わり将棋になりました。同じルーツを持つのですが、チェスと将棋はまさに似て非なるゲームです。いったいどんな違いがあるのでしょうか?
チェスの盤は8×8マスで、駒は6種類です。駒の動きは以下のとおりです。
将棋では飛車と角行が二強ですが、その強さを併せ持つクイーンがあります。また桂馬は前方にしか動けませんが、ナイトは8方向に動けます。
このように駒の利きが強く、将棋より盤面が狭いので、チェスでは囲いを作ってキングを守るという考えがありません。序盤はきわめて短く、すぐに中盤戦に入るという感覚です。
チェスが将棋と一番違うところは、取った相手の駒を使える持ち駒ルールがないことです。というより、この手のボードゲームで持ち駒ルールがあるのは日本の将棋だけなのです。持ち駒があるから、将棋は終盤になっても駒が減らず、局面は複雑になっていきます。しかしチェスは終盤に進むにつれて駒が減っていくので、局面がシンプルになっていきます。
そのため駒の数に1つしか差がなくても、よほどのミスがないかぎり、逆転するのは難しいのです。
将棋には「千日手」「持将棋」という引き分けがありますが、そう頻繁に発生するものではありません。しかしチェスは、引き分けが多く発生するゲームです。チェスは先手番の白が有利とされており、そのため後手番の黒は、積極的に引き分けを狙うのがよいとされています。
引き分けになる条件はいろいろありますが、将棋にはないルールとして「ステイルメイト」があります。自分の手番のときにキング以外に動かせる駒がなく、かつどのマスに動いてもキングが取られてしまう場合、その局面をステイルメイトと呼び、引き分けに終わるのです。引き分けに持ち込むための戦略、駆け引きが多いのは、将棋にはないチェスの特徴のひとつです。
将棋は対局開始時に「お願いします」とお互いに言い、終局時には「ありがとうございました」と言って礼をするのが一般的です。チェスはというと、開始時に握手をします。そして終局時にも負けた側がリザイン(投了)の意思を示したら、握手をします。このあたりは西洋のゲームらしいですね。
似て非なるゲームとはいえ、将棋が指せればチェスもスムーズに覚えられる場合がほとんどです。そしてチェスを趣味とする将棋棋士は少なくありません。その代表が、永世七冠の偉業を達成し、国民栄誉賞も受賞した将棋界の第一人者・羽生善治さんです。実はチェスにおいても国内トップレベルのプレイヤーで、時間さえあれば本職のチェスプレイヤーとトレーニングをしたり、国外の大会に参加したりしています。
2014年には、元世界王者でコンピューターチェスと戦ったことでも有名なガルリ・カスパロフさんとも対局しています。しかしこの時は2戦して2敗。さすがに世界トップレベルが相手だと分が悪いようです。この羽生vsカスパロフの対局を見てチェスを始めたというのが、若手棋士の中でも実力派の青嶋未来さんです。2015年4月にプロ棋士デビューしたのですが、同年6月には国内のチェス大会で優勝するなど、常人では考えられない上達ぶりを見せています。羽生さんに続き、今後の活躍が期待されます。
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