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飛車は将棋において、もっとも攻撃力が強い駒です。縦と横にいくらでも動けて、成って「龍」になれば、斜め方向にも一マス動けるようになります。
その攻撃力の強さから、王将を除けばもっとも大事な駒といっても過言ではないでしょう。プロでもアマチュアでも、飛車をタダで取られてしまうようなことがあれば、もうほとんど逆転は難しくなります。
「ヘボ将棋 王より飛車を かわいがり」
江戸時代にこんな川柳が詠まれています。飛車が大事だからと逃げていたら、肝心の玉が詰みそうだということを笑っている内容です。将棋好きの人たちの考えは、何百年も前から変わらないようですね。
飛車の強力さを言い表す格言がいくつかあり、「鬼より怖い二枚飛車」がそのひとつです。
図は次に▲6一飛成と金を取っても、もう1枚の飛車があるため、相手は△同銀と取ることができません。こうなれば勝負がついたも同然です。相手から飛車を取ることができたら、このように攻められれば一番の理想ですね。
「龍は敵陣に」という格言もあります。飛車はそのままでも強力ですが、やはり龍に成ってこそ、その威力が最大限に発揮されます。角が成った「馬」も同じくらい強力ですが、龍は横に大きく動けるので、敵陣にいる場合の攻撃力が段違いなのです。
これは「一間龍」という形です。龍と相手玉が同じ段にいて、距離が一マスしかなく、間に相手の駒があるとこう呼びます。
ここでは龍を逃げずに、▲4三銀と打つことができます。飛車と違って斜めに利いているので△同玉と取ることはできません。よって△2一玉と逃げるくらいですが、玉を守っていた金を悠々と取って、もう相手玉に逃げ場はありません。一間龍の形に持ち込めば、ほとんどの場合勝つことができるでしょう。
飛車は攻めの要ですが、実は守りの駒としても強力に働きます。
相手の銀が玉の真正面におり、逃げ道を塞いでいますが、2八にいる飛車に注目してください。この飛車の横利きがあるため、次に持ち駒の金を打たれてもそれで取ることができ、ギリギリ逃れているのです。
特に自陣の守りに使う場合、自陣飛車と呼びます。飛車は敵陣で使いたいものですが、このように終盤戦の最後の砦となることも少なくありません。自玉が詰みそうという状態で、持ち駒に飛車があるなら、まずは自陣飛車を考えてみましょう。
飛車の攻撃力、つまり機動力の高さは、諸刃の剣でもあります。うっかり致命的なところに動かしてしまうミスも、しばしば発生します。
これは相手から角交換され、直後にその角を打たれて王手飛車取りを決められてしまったという図です。王手なので玉を逃げるしかないのですが、タダで飛車を取られてしまいます。両取りは何でも痛いのですが、特に王様と飛車の場合は「目から火の出る王手飛車」という格言にもなっているほどです。
飛車を動かすときは、王手飛車をかけられる危険はないか、まずそのことを考えましょう。もし王手飛車をかけられてしまったら、次に相手玉を詰ますことができるという局面でもなければ、その時点で投了したほうがいいかもしれません。それほど挽回は困難なのです。
一般的に、自玉と飛車は離れているほうがよいとされています。飛車ほど価値の高い駒は率先して狙われやすいので、玉の近くにいればそちらも危険にさらされるからです。
簡単な部分図ですが、次に△7七金とされれば両取りになり、玉を逃がすしかありません。ここではあらかじめ飛車を逃がしておきたいところですが、そうなると相手に手番が渡るので、ますます攻められてしまうでしょう。
このような局面は「玉飛接近すべからず」という格言で、はっきりよくないと昔から教えられています。
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