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史上最強の棋士は?」はよく話題になるが

将棋ファンがしばしば挙げる話題のひとつに「歴史上もっとも強い棋士は誰か?」があります。しかし基本的には、のちの時代になるほど競技全体がレベルアップして、戦術などが洗練されています。

 

現代の棋士が有利なのは明らかですが、異なる時代の棋士を単純に比較するのは、あまりフェアではないと思われます。

 

よって、その時代その時代で「最強は誰か」と取り上げるのが、この問題を可能なかぎりフェアに論じる方法ということになるでしょう。

江戸時代の名人たち

将棋の名人は徳川家康に認められたことによって始まりました。名人の座は大橋家、大橋分家、伊藤家の御三家が独占する形で、江戸幕府の崩壊まで受け継がれていきます。江戸時代でもっとも強い者はといえば、この御三家のうち誰かということになります。

 

江戸の名人の中でも特に強いと言われるのが、七世名人の三代伊藤宗看と、九世名人の六代大橋宗英です。

 

三代宗看は現代でも名作と謳われる詰将棋作品集『将棋無双』で知られていますが、指し将棋のほうも強く「鬼宗看」と恐れられました。六代宗英も「名人中の名人」「近代将棋の祖」と言われるほどで、後世に大きな影響をもたらしたとされています。

幕末の「棋聖」天野宗歩

江戸時代は御三家以外の在野、つまりアマチュアの棋士で目立った人はほとんどいませんでしたが、唯一の例外と言えるのが幕末の天野宗歩です。

 

当時、御三家以外の人間は八段や九段(名人)に上ることはできず、天野宗歩も七段止まりでしたが、実力十一段とも十三段とも言われ、名人を凌ぐほどでした。その強さから後に「棋聖」と呼ばれますが、現在のタイトル戦「棋聖戦」は天野宗歩に由来しています。

明治から大正まで

江戸幕府が崩壊するとそれまでの名人制も消失しましたが、周囲から推挙される形で継続することになりました。

 

この推挙制時代の名人は、十二世の小野五平と十三世の関根金次郎です。将棋界が衰退していた頃の人物なので、現代ではあまり取り上げられることがないのですが、単純な実力で言えば並のアマチュアでは歯が立たなかったでしょう。

 

一方、関根金次郎のライバルだった阪田三吉は、歌や映画『王将』の主人公として現在でも有名です。関西将棋界で頭角を現した阪田は、周囲の推薦もあり名人を名乗りました。これは正式な名人ではなく自称に過ぎませんでしたが、関根とは生涯を通じて互角の成績で、実力的には当時のトップクラスでした。その功績により、没後に日本将棋連盟から「贈名人・王将」の称号を贈られました。

昭和初期から終戦まで

昭和に入ると、名人は完全な実力主義のもと決められることになりました。初代実力制名人となったのが、関根十三世名人の弟子である木村義雄です。

 

木村は戦前戦中を通じてほとんど敵なしで、「常勝将軍」と呼ばれました。名人位を五期獲得すると「永世名人」「○○世名人」を名乗れるという制度が新たに設けられますが、木村はこの資格を早々と獲得し、引退後は十四世名人を名乗ることになります。

 

ただ実力が優れていただけでなく、敗戦で一から出直しとなった将棋界の制度の確立にも尽力しました。このため木村は、現代将棋の礎を築いた立役者としても評価されています。

将棋界が大きく発展した戦後

戦後から高度成長期にかけての最強者は、まっさきに大山康晴の名が挙げられます。

 

1952年、ピークを過ぎた木村義雄を倒して名人となり、以降5連覇。早くも十五世名人の資格を獲得しています。その後失冠しますが、すぐに復位してさらに13連覇という偉業を成し遂げています。長きにわたって「大山時代」を築き、亡くなるまでに歴代最多勝利数、通算獲得タイトル数歴代2位など、数々の記録を打ち立てました。「歴代最強は誰か」の話題に、第一に名前が挙がる棋士です。

昭和後期

昭和後期の代表的な棋士が中原誠です。名人戦を13連覇していた無敵の大山康晴に勝利し、以降9連覇。十六世名人の称号を得ます。名実ともに大山時代に終止符を打ち「中原時代」を築きました。2009年まで現役を続け、通算獲得タイトル数歴代3位など、偉大な実績を残しています。

 

そんな中原と肩を並べる棋士のひとりが谷川浩司です。史上2人目の中学生棋士としてデビューすると、わずか21歳で名人位を獲得、後に十七世名人の有資格者となります。「光速流」と呼ばれる圧倒的な終盤力を武器に数々のタイトルを獲得、通算獲得数は歴代4位です。今も現役棋士として活動を続けており、ベテランの代表格です。

平成時代

平成の最強棋士として、誰もが挙げるだろう棋士が羽生善治です。史上3人目の中学生棋士としてデビューすると、10代でタイトルを獲得するなど早くもトッププロの仲間入りを果たします。

 

そして1996年に史上初の七冠を達成し、日本中に将棋ブームを巻き起こしました。その7つのタイトルをさらに規定の回数獲得して「永世七冠」を達成したのは、記憶に新しいニュースです。

 

タイトル獲得数は歴代1位で、歴代最多勝利数も近いうちに塗り替えることが有力視されています。さらに国民栄誉賞を受賞し、将棋界の第一人者として揺るぎない地位に立っています。

そして現在

まもなく平成が終わり、新しい元号になります。新たな時代の最強候補は、やはり一躍時の人となった藤井聡太でしょう。歴代新記録の29連勝、史上最年少棋戦優勝など、デビュー間もなく輝かしい成績を上げました。これからも数々の記録を打ち立てていくことが予想されます。

 

単純に実績で言うと大山康晴と羽生善治の2名が突出しており、実際にこの両名のみが比較されることが少なくありません。しかしそれだけでは終わらず、時代ごとの最強者に目を向ければ、より議論が楽しくなるはずです。

 

※歴代記録についてはすべて2018年3月現在。

 

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